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世界平和祈願
幼少期を長崎で過ごした私にとって 夏は怖いものでしかなかった。 暑くなっていき、蝉が鳴き始めることが 恐怖の季節への合図だった。 テレビ番組は原爆の特集で埋め尽くされ 毎年8月9日の登校日には 下駄箱から廊下まで構内にずらっと 原爆資料館さながらの資料が 目線の高さに張り出される。 目を伏せたくても入ってくる。 全校集会では毎年被爆者による 悲痛な体験談がまことリアルに語られる。 とてもSNS上で文字にできるような内容では無い。 耳を伏せたくても伏せられない。 息も苦しく恐怖に苛まれた。 頭や心の中まで浸透するほどに教え込まれ 些細なことでも関連付け 日常生活でも恐怖を持っていた。 水洗トイレに流れる水の様子が キノコ雲に見えて怖かった。 流す水の音さえ怖く感じた。 お風呂で洗髪した後、 この後目を開けたら 一面が焼け野原になっているのでは… などと、怯えていた。 8月6日と9日のそれぞれの時間には 街中にサイレン音が響き渡り 県民は何をしていても立ち止まり 頭を下げて目を閉じるのが当たり前だった。 私の祖父母もその日のことを知っている。 どこに
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